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東方鍼灸院研修生の感想文

VOICE107(長期研修)/鍼灸師(神奈川県・女性)

2年前、鍼灸学校3年生の時に受けた1日だけの短期研修、その時の衝撃は今でも忘れません。吉川先生の下で研修をされた、目白鍼灸院の柳本先生に治療していただいていたため、「陰陽太極鍼」の素晴らしさは体感していましたが、見るのは初めてでした。吉川先生が迷わず置いていかれる鍼で、次々と患者さんの体が変化していく様子に驚き、絶対ここに来て勉強しなくては!と強く思ったことをはっきりと覚えています。しかし同時に、ここまで効果が高いのは、吉川先生だからこそではないか?という思いもありました。「そんなことないわよ。本当に誰でも出来るわよ。」そうおっしゃっていただいたことで決心が固まり、長期研修生としてまた帯広へやって来ました。

 実際に患者さんの治療をするようになって間もない頃は、反応や症状がなかなか取れないことも多く、自分の未熟さも考えず、やはり先生しか出来ない治療なのでは?と悩んだ時期もあります。しかし、鍼を置いた位置を先生に直していただいたり、敏感な患者さんが教えてくださる場所をよく触り、その感覚を指で覚えていくうちに自然と悩みは消えていきました。教科書通りの位置にはない活きたツボが探せるようになると、鍼を一本置く毎に体のあちこちの反応が取れるようになり、私の治療も結果が出るようになりました。
 鍼の位置を1ミリ修正する、それだけで症状が劇的に変わるという経験も何度もしました。「五十肩に王穴」「坐骨神経痛に胃兪」など、吉川先生の治療は臨床にすぐ役立つものばかりです。でもそれは、当たり前ですが、きちんとツボが取れているから効くのだと分かりました。知識だけの頭でっかちではダメで、鍼 灸師として、やはり一番の基本は、手や指を作ることだと感じます。体表反応の変化を観察し、一本一本の鍼の効果を確かめながら行う治療では、その鍼が効いたか効かなかったか、が明確に分かります。患者さんにもその場で体の変化が分かるため、誤魔化しは効きません。だからこそ、指の感覚を鍛えられたのだと思っています。

 東方鍼灸院には、実に様々な症状の患者さんがいらっしゃいました。この症状にはこのツボ、そのような決まりきった治療法しか知らなければ、正直戸惑うような病名もありましたが、「陰陽太極鍼」はどんな病名・症状にも応用できました。症状や場所から、どの臓腑・経絡に問題があるかを予測し、あらゆる陰陽を考えながら、陰陽のバランスを調整でき症状が改善する治療法やツボを選ぶのですが、臨機応変にそれらを探し出す力を身につけられたことは、かけがえのない 財産です。以前、担当していた患者さんの難治性の症状に対して、「本当に取れましたか?」と思わず笑ってしまったほど、思いもかけない治療点を見つけたことがありました。先日、吉川先生から、今でもその治療で患者さんが楽になっているとお聞きし、大変嬉しかったです。
 患者さんがどんどん良くなり、笑顔で帰って行かれる喜び。心身ともに回復し、どれだけ人生が豊かになったか、をお話してくださる患者さんもいらっしゃい ました。未熟ながらも、吉川先生が信頼してくださり治療を任せてくださったからこそ、その喜びをたくさん経験することができたのだと感謝しております。患者さんが納得してお帰りいただけるよう、治療で確実に結果を出す、それは大変なプレッシャーでもありましたが、これからの一生を鍼灸師としてやっていく自信が持てるようになりました。

 研修中、私にとって好きだった時間の一つは、素晴らしく効いた治療など発見したことや、患者さんの症状改善の報告をし合う時でした。吉川先生のお話をうかがうのも大変勉強になりましたし、私たち研修生の報告を、先生が本当に嬉しそうに聞いてくださいました。先生は、時には治療をしながら、患者さんと一緒 に驚き、一緒に喜び、「鍼ってすごいわね。」と眼を輝かせることもあります。吉川先生の傍にいると、鍼灸を愛する気持ち、情熱が本当に伝わってきました。 東方鍼灸院に来てから、私もますます鍼灸の世界が好きになり、自分の選んだ鍼灸師という仕事に、心からやり甲斐と誇りを感じます。

 この度、実家の事情により研修を終了しましたが、多くの貴重な経験をさせていただき、大変充実した研修でした。日常の臨床だけではなく、吉川先生の DVD撮影、日本東洋医学会学術総会での実技セミナー助手・鍼灸サロンスタッフ、鍼灸の大家と呼ばれる先生との実技交流など、この時期に長期研修生として 勤務できたことは本当に幸せでした。

 寒さも厳しい帯広に単身来ることは一大決心でしたが、代表、吉川先生、離れていても東方鍼灸院出身の 先輩方がいつも気にかけてくださいました。長期研修生の同僚とは、美味しい物を食べに行ったり、道東をめぐり大自然に触れ、北海道の生活を楽しむことがで きました。全国から来られる短期研修生との出会いも大いに刺激になり、今も大切な仲間です。患者さんとの触れ合い、温かいお心遣いにも元気をいただきまし た。たくさんの方々に支えていただいた1年10ケ月でした。お世話になりました皆様に、心から深く深く感謝申し上げます。帯広に来て本当に良かったです。

 実家の神奈川では、「痛そう、熱そう、怖い」というイメージから鍼灸治療を受けたことのない友人・知人たちが、吉川先生の「刺さない鍼」に多くの興味と 期待を持って、私の帰りを待っていてくれました。東方鍼灸院の患者さんは、怖がらずに安心して、ご自分の体の変化を楽しみながら治療を受けていらっしゃいます。研修で学んだことを活かし、もっともっと多くの方に鍼灸治療の素晴らしさを知っていただき、身近な医療として、さらには、調子が悪くなくても健康維 持のために続ける鍼灸というものを広めていけたらと考えています。そのためにも、吉川先生のように、これからもより良い治療を求めて日々努力し、頑張ってまいります。(2012年)

VOICE106(長期研修)/鍼灸師(大阪府・男性)

■1年7ヶ月の研修を終えて

 2009年の4月から吉川先生の下で研修生として勉強させて頂いて、本当に多くの事を教わり、体験することができました。この研修期間は、僕の中でとても大きな財産になると思います。
 今まで、地元大阪では鍼灸接骨院にしか勤めた事がなく、鍼灸をもっと勉強したいと思い、以前から吉川先生の治療に興味があり、先生の所で働きたいと思っていました。
実際に働かせて頂いて、やはり鍼灸はすごく奥が深く、改めてこんなにも効果があるんだという事を痛感しました。
 先生の治療を見て最初に思った事は、繊細でほとんど刺入する事がないので、痛みを感じる事がなく、患者さんにとって優しい治療だなと思いました。僕の周りの鍼灸を受けた事がない友達に聞くと、鍼灸は痛くて恐いイメージだと言う人が多いので、この治療法なら、こんなイメージを持っている人にも受け入れてもらえやすいのではと思います。
 しかし、鍼を皮膚に置くだけで、本当につらい症状が治るのかと思いましたが、実際に、あちこち病院にも行ったが治らなかったり、色々な治療もしたが良くならなかったと言う患者さんが、「楽になりました」、「痛みがなくなった」と言って、帰る時には笑顔で帰っていくのを実際に見て、本当に効くんだ、すごいと思いびっくりしたのを覚えています。
 陰陽太極鍼法や子午流注を使った治療法はとても効果があり、臨機応変で応用も効き、実際に僕も患者さんを治療させて頂いて、痛みがやわらいだり反応が消えたりと刺さない鍼でも効くんだという事を実感しました。
  そして、半年間一緒に働いていた三重県の原さんには刺絡を細かく教えて頂き、刺絡も大変即効性があり、効果のある治療法なのだと勉強になりました。
 吉川先生の下で働かせて頂いて一番勉強になったのは、吉川先生程の方でも毎日勉強されていて、常により良い治療法を求めて試行錯誤されている姿を間近で見ていた事は大変勉強になりました。
 また、北海道に行き良かった事は、人との出会いがたくさんあった事でした。知り合いが一人もいない北海道での生活は辛い時もありましたが、代表や吉川先生、亜希さんが気にかけてくれたり、東方鍼灸院の先輩方との出会いもあり、色々な話を聞かせてもらえた事が大変良い思い出となりました。
 吉川先生の下での勉強、経験、そして人との出会い、北海道という場所での生活、どれも僕にとって新鮮で心から北海道に行って良かったと思います。
 これからも日々勉強して腕を磨き、少しでも、患者さんを一人でも多く楽にできる様に精進していく事が、お世話になった代表や吉川先生への恩返しになるのではと思います。
 この1年7ヶ月は、言葉では言い表せない程、感謝の気持ちでいっぱいです。(2011年)

VOICE105/鍼灸師(北海道・男性)

 国内トップクラスの鍼灸師である吉川院長の技術を見学出来る機会という事で伺う前から楽しみにしていました。診療時間前には、緊張している私の心を解すようにお話しをして頂きありがとうございました。吉川院長、スタッフの皆様の暖かさが嬉しかったです。治療を見学させて頂き、驚きの連続でした。

 患者様の身体のツボを一つ一つ丁寧に切経をしていき、王不留行又は皮内鍼を貼る、陰陽太極鍼をする。するとバランスが整い患者様の辛い症状が消えて行く。膝の痛みがあり、サークル歩行器を使わないと歩けない患者様に治療をすると自身の身体のみで歩けるようになった症例を聞かせて頂き、その患者様が来院なさった時「確かにスタスタと歩いている!」と技術力と即効性の高さに驚きました。

 時には、確実に結果を出す為に数時間をかけて治療をする事も知り、治療家としての責任感の大きさに感服しました。吉川院長は何度も「鍼灸は素晴らしい。凄い。面白い」と嬉しそうに楽しく話していて、鍼灸治療を愛していて信じている事がとても印象に残っています。だからこそ、素晴らしい治療結果を出し続けている事も納得します。

 お忙しい時間の合間に丁寧な実技指導もして頂き、本当に感謝しております。自身の未熟な技術と知識を実感し「基本の部分となる所を学び直さないといけない」と意識を締め直す事が出来ました。(2018年)

VOICE 104/鍼灸師(北海道・女性)

 今回で2回目の研修となりましたが、鍼灸の更なる可能性を目の当たりにしました。吉川先生の治療は患者さんと確認しながら反応を探り、全身の気血の流れを整えていく。患者さん自身その過程で何か体が楽になってきていると感じ、治療後はそれをより実感している姿がありました。施術者と患者さんが互いにここがツボだと認識し、わかり合えることが陰陽太極療法の良さなのだと思います。

 また、足裏のツボにも驚きました。吉川先生との実技練習をさせて頂いた時、足裏の指の付け根に反応があったので吉川先生に治療して頂いたらその一穴で体の気が流れるのを感じました。治療の流れも丁寧に教えて頂いたので、臨床で活かせるよう練習していきたいと思います。

 治療院では刺さずに皮膚に鍼先をあてる治療も行いますが、まだベースにはなっていません。鍼を刺さずに最大の効果を発揮し、リスクも少なくここまで安全な治療法は他にはないと思うのでとても勉強になりました。(2018年)

VOICE 103/鍼灸師(北海道・女性)

 今回の研修で、特に印象に残ったことが2つあります。1つ目は、「理屈や理論じゃないのよ。効けば、いいのよ。」これまで、沢山の知識を得て、出てきた症状や「ツボ」の意味や体の状態を説明でき、そして多くの経験を積んでこられて吉川先生だからこその言葉だと感じました。

 考えてみると、理論や理屈で症状が改善されるわけではなく、目の前にいる人の今の状態をありのまま受け入れ治療する。理論や理屈に縛られていては、見えるものも見えなくなる、吉川先生の治療を見学させていただき、そう感じました。

 2つ目は、「こうしてさするだけで、皮膚は何でも教えてくれるの。毎日が不思議の連続よ!!」と嬉しそうにお話しされる吉川先生のお姿。目の前では、フェザータッチで皮膚感覚を確認しながら、皮内鍼や王不留行で施術を施したのち、再度確認すると、先ほどまで出ていた症状が改善。不思議の連続が何度も起こりました。吉川先生自身、治療するほど、より活き活きしているようにも感じました。そして、そんな吉川先生のお姿を見ていると、私自身の施術に対する意欲も上がってきました。

 治療院に戻り、スタッフで試してみました。身体が変わると、お互い嬉しいと感じます。今回の研修で、理論や理屈で治療するものではないにせよ、「フェザータッチ」や「経絡の把握」、「東洋医学的知識」など、基礎的なことではありますが学ぶべきものが明確になりました。そして、実際に施術し経験を積んでいきたいと思います。(2018年)

 

VOICE 102/学生(東京都・女性)

 直接先生にお目にかかれて、見学させていただき、治療を受け、更に僭越ながら先生に治療という機会までいただき、惜しみなく資料・プリントまで分けて下さり、本当に有り難く、感謝の気持ちで一杯です。

 この様に治療に真摯に向き合い、志が高く、日々研究し進化し続けている、明るくオープンマインドで、愛のある開かれた治療院は他に行ったことがありません。

 先生の治療を目の当たりにし、丁寧に患者さんの身体の感覚に寄り添い、次々と魔法のように効果を上げていかれる様は、まさしく奇跡のようでした!それを「ね!簡単でしょ?!」「すぐに誰でもできちゃうわよ~!」と優しく言ってしまう先生こそまさしく素晴らしい存在で、鍼灸界で初めて心から尊敬できる方にお逢いできました。

 治療院の中にある、光の中に咲く色とりどりの鉢植えや、切り花達の生き生きとした美しい様は、やはりきれいな気が流れている証の様で、心地よく感じました。(2018年)

VOICE 101/学生(福岡県・男性)

 私は、40代で体調を崩し、座禅と鍼灸で救われた経験から気に興味を持つようになり、還暦を前に鍼灸師になりました。以来、まがりなりにも気をうかがう治 療を心がけてきました。しかしながら、脈診と手掌感覚に重きをおいた診断と選穴、手技には往々にして迷いが付きまとい、治療効果についても術者の納得と患 者の受け取り方が必ずしも一致していないことが気になっていました。

 そのような中、かつて鍼灸学校の図書館で見た陰陽太極鍼のDVDを思い出し、吉川先生 の論文やDVDを見返して、この鍼を習得することができたら前述の悩みの多くが解消するのではと思うに至りました。

 私は、鍼灸とは気の流れを整えることで身体が持っている癒す力、つまり自己治癒力が発揮されて治癒につながる治療法であると考えています。一方、いわゆる 特効穴に鍼をして特定の疾患を治すという治療法を否定はしないものの、それらに過度に傾斜する事には抵抗感がありました。

 その点、陰陽太極鍼はどんな症状に対しても陰陽のバランスを整えてゆくことで、全身の経絡の疎滞を取り除き、気の流れを整える理想の鍼法でした。いくつか コツはあるものの、特定の疾患に対してそれ専用の治療を行うわけではありませんから、いわゆる難病と呼ばれる病気に罹患した患者さんにも治療を行うことが できます。私の研修期間中にも、実際に難病の患者さんがいらっしゃって驚くべき改善をみられていたのが印象的でした。

 陰陽太極鍼の特徴として、異常のある経絡を見つけ出すのに、問診、舌診、脈診に加え募穴診、首回りの経穴の反応、腓腹筋の反応といった患者自身の不快な感 覚を利用していることが挙げられます。そして、それらの不快感が施術によって次々に消失することで患者自身が変化を認識でき、更に特筆すべきは、それらの 反応を消し去る過程で患者が申告していた主訴も次々に消えていくと言うことです。

 まさに、陰陽のバランス、気の流れが整って自己治癒力が発動された証左だ と思います。しかも、その変化のスピードは瞬時で、鍼灸学校時代に「気は一呼吸する間に6寸進む(一日に全身を50周する)」と聞いて「なんて大袈裟な」 と思っていましたが、まさにそう言ったスピード感でした。

 学生時代から「脈診十年」と言う言葉を繰り返し聞かされ暗澹たる気持ちになっていた私には、患者と共に異常のある経絡を探し出し、更に、その経絡上の異常経穴を同じく患者の実感で特定し、補瀉まで判定してゆける治療法は革命的なものに映りました。

 六部定位脈診で正経十二経の状態をぴたりと探り当てる名人芸 には憧れるものの、十年かかったら自分は何歳になるのか、ならば要穴を中心に十二経全てを触ることは合理的です。この治療法では、古典に書かれていたり鍼 灸学校で学んだりした常識的な選穴を覆すような配穴や補瀉が選択されることも有り、縮こまりがちな治療の幅が広がります。

 更に、施術法もDVD時代から進歩していて王不留行や皮内鍼を貼り付けると言う侵襲のほとんど無いものが中心で、子供や痛みに敏感な人にも受け入れられるものでした。

 私が今回学ばせて頂いたことは吉川先生が長年の研究と臨床の結果から編み出された鍼法のエッセンス部分で、これからまだまだ臨床経験を積まないと使いこな せないことは他の鍼法と同じです。

 ただ、何がうまく行って何が行かなかったかを自分で把握できたり、治療結果から治療前の脈診や舌診で判定したことの正否 を自ら点検できたりすることは、初学者には大変ありがたい陰陽太極鍼の特徴だと思いました。

 これからは、少しでも吉川先生の教えを理解できるよう、先生がヒントを得られた古典や最新の書物にも目を通しながら臨床に活かしていきたいと考えております。(2018年)