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東方鍼灸院研修生の感想文

VOICE113(長期研修)/北海道・鍼灸師(男性)

 研修が始まり半年になります。私は今年鍼灸学校を卒業したばかりですが、在学中に2度短期の研修を受けさせて頂きました。学校で習う鍼は西洋医学による鍼が多く、経絡や経穴の意義を在学中には理解することが出来ませんでした。しかし、東洋医学の英知が数千年もの間続き、今も尚息づいているという事実は、ツボが存在しているという事に他ならないと思い、その存在を確かめる為に東方鍼灸院の長期研修に申し込みをしました。

 卒業してすぐの、何も臨床の経験もないままの研修でしたが、1ヶ月間、毎日、吉川先生の傍で治療を拝見させて頂いて、細かくご指導を頂いていると否が応でも記憶の中に治療の大枠が入ってきました。約1ヶ月が経った頃に、そろそろ治療を行ってみてはということで、初めは1日1人~2人ペースで治療を行いました。学んだままに施術を行うしか出来ない状況でしたが、それでも着実に効果が出ることに驚きました。良くなっていくということが、実感として分かるにつれ て、治療効果も上がっていったように思います。

 それでも、ツボの位置がわずかにズレていたり、弁証に過不足があると治療効果が出ないことがあり、日々新しい課題を乗り越えていく感じでした。今でも、分からないことが多くありますが、着実に治療の効果が出来るようになってきていると思います。東方鍼灸院の患者さんは通常さじを投げてしまうような難治の方がほとんどですが、それでも効果を上げる陰陽太極鍼は本当にすごい治療法で、再現性が非常に高く、誰でも効 果を発揮することができる素晴らしい治療だと思います。東洋医学とは、鍼灸とは、生命とは、そして存在とは何であるかを知らず、初地を踏み出したばかりですが、これからも精進していく次第です。(2015年)

VOICE112(長期研修)/神奈川県・鍼灸師(男性)

 長期研修生として東方鍼灸院で働き始め半年が経ちました。本屋でたまたま見かけた「鍼灸ジャーナル」の眼科特集で吉川先生のことを知りました。興味を持ち、どのような治療をしているのか見てみたいと思いましたが、北海道にありすぐには行けないので、東方鍼灸院で研修されていた柳本先生のところに行きました。治療が始まると、手足をなでられ一番過敏に感じた所へ シールでとめないと落ちてしまうほどの鍼治療。感覚としては、ただ置かれただけという感じ。もちろん鍼の痛みは全く無い。それなのに、身体があちこち変化して、治療が終わると身体全身が軽くなりました。それまで痛いところに鍼をうつ局所治療しかしてこなかったので衝撃的でした。

 柳本先生に東方鍼灸院に興味があることを伝えると「これから10年間迷いながら治療するよりも、吉川先生のところで臨床、技術、理論をしっかり学ぶ方が将来のためになるから行った方がいいよ!」と助言を頂きました。その頃どんな治療をするのがいいのか迷っていたので、背中を押された気持ちになり研修に行くことを決めました。

 東方鍼灸院で3日間見学して、実際に目の前で患者さんがあっという間に良くなっていく姿を見て驚きの連続でした。皮内鍼と漢方の種(王不留行)しか使わないので、 痛みなく安心して受けられ、治療効果もあり、刺さない鍼はとても魅力的でした。神奈川に戻り早速、父に試してみると膝の痛みが良くなりました。吉川先生がおっしゃっていた、この治療はだれでもできるからという言葉通りでした。吉川先生のもとでもっと学びたいと思いましたが、長期研修生を希望した時には新しい研修生が入りタイミングを逃してしまいました。残念と思っていた時に、吉川先生からスタッフが退職するので来ませんか?とお誘いのお電話がありました。 これは何かの縁だと思い長期研修生として東方鍼灸院に行くことに決めました。

 今まで現代医学的な治療しかしてこなかったので、初めの頃は経穴がわからず募穴を聞かれても、忘れていて不安でいっぱいでした。でも、吉川先生の治療をそばで見て、話しを聞いていると不思議と東洋医学の知識がいつのまにか頭に入っていました。吉川先生の近くにいると日々新しい発見があり、とても勉強になります。

 東方鍼灸院には、整骨院に勤めていた頃には出会えないような疾患の方も来ます。以前ならどう治療していいか分かりませんでしたが、陰陽の考えを使い、経絡の流れを良くすれば、どんな疾患でも対応できます。そのためには、五行、流注、経穴などをしっかりと把握していないといけません。ツボの位置が1ミリずれるだけでも効果が全く違います。学校の頃は国家試験のた めだけに必死に覚えていましたが、実際に臨床で使うとこんなに大事なことなんだと気付かされました。

 東洋医学というと難しいイメージがあり敬遠していまし たが、現代医学では体験できない不思議なことばかり起きます。例えば、バネ指の方で陰陽を使い足のツボを一穴刺激しただけでさっきまで動かなかった指が動 いたこと。一人では歩けない方に、背部兪穴と耳穴の治療をしただけで帰りにはスラスラと一人で待合室まで歩き、現在は踊りまで出来るまでになったこと。他 にも数々の驚きの体験をしました。今後も不思議なことがたくさん起こると思っています。吉川先生の進化にはついていけませんが、少しでも近づけるよう日々 勉強、経験を積んでいきたいと思います。初めての一人暮らしが北海道で色々な不安がありましたが、いつも気遣いしてくださる代表、院長、一緒に学び支えてくれたスタッフに感謝の気持ちでいっぱいです。(2015年)

VOICE111(長期研修)/鍼灸師(女性)

 東方鍼灸院を退職後、カリブ海を巡るディズニーファンタジー号に鍼師として乗船してからあっという間に4ヶ月が過ぎました。現在の住まいでもあり、職場でもあるディズニーファンタジー号は、2012年3月に就航した新型船(全長340m、全幅38m、総トン数128,000 トン)で、乗客定員約4000名、乗組員約1500名、日本人乗組員は私を含め最大時3名でした。私の職場である6つ星スパは、船長が指揮をする船橋より も上である12階船首にあり、フィットネスセンター、床屋、美容室、歯のホワイトニング、ネイル、フェイシャル、マッサージなどのサービスを提供しています。

 その中の一室が鍼治療室です。船内は安全のため限られた場所以外は火を使用不可、お灸はできませんので、鍼治療が主となります。スパの中でも最高の場 所である治療室から見える景色はすばらしく、患者さんに「船内で最高の場所で仕事をしているんだね。」と言われます。世界中からの患者さんはアメリカ人が一番多く、鍼を受けるのがほとんど初めてです。「鍼って何にいいの?」と言う方、「前から受けてみたかったけど、機 会がなかった。」という方、WHOの鍼適応疾患が記載された鍼の案内を見て予約される方、スパの施設紹介を行うオープンハウスや鍼灸の紹介・腰痛・漢方の セミナーに参加され予約される方がほとんどを占めます。

 また、ディズニークルーズはリピーターや大人数の一族や友人グループで来られるが多いです。中には 「前回のクルーズで鍼をしてよかったから」と予約をされる方や、治療を受けられた方の紹介で予約をしてくださる方もいらっしゃいます。数は少ないですが、 はるばる日本から来られて「鍼を始めて受けます」と言う方もいらっしゃいます。

 乗船したての頃、マネジャに一通り鍼治療する試験がありました。幸い治療室には耳鍼用として王不留行の在庫が大量にあったので、東方鍼灸院で学んだ「刺 さない鍼・陰陽太極鍼」をマネジャに行いました。売り上げ達成のため常にストレスいっぱいのマネジャには、心経や肝経のツボがよく効きました。王不留行を いくつか貼った直後に、最初は圧痛が強かったふくらはぎがやわやわになった時、彼女は大笑いし始めました。痛みも何も感じないのに効果が出ることに驚いたようです。

 その後、マネジャのアドバイスにより「通常、鍼師は治療に鍼を使うんだけど、私は王不留行を使います。どちらも同じ効果ですがどちらがいいですか?」と尋ねるようにしました。するとほとんどの患者さんは「私は鍼のことはなにも知らない。あなたが専門家なんだから、好きにしていいわ。」「効果が出 ればなんでもいいよ。」とおっしゃいます。

 治療は、鍼は何千年も前から中国で治療されているもの、バランスを整える自然療法であること、また、日本人が行 う鍼のよさがを理解して貰えるように説明しながら進めます。その場で施術者、患者さんの双方で効果が確認できる治療法は、「すごい!魔法みたいだね」と、 患者さんに大変喜ばれます。「ミッキーみたいでしょ」と冗談で返すと、「私にとってはミッキー以上!」と言われることもあります。西洋人には鍼は神秘的な魔法のような療法と思っている方もいると聞きますので、誤解を防ぐために、一般的に鍼は複数回受けると効果が高いことを説明もします。

 日本で学んだ鍼を世界中の人に施術する。こんな素晴らしいことが体験できるのは、東方鍼灸院で学んだ経験のおかげと大変感謝しております。私が東方鍼灸院を知ったのは、東洋鍼灸専門学校の先輩に「(私の出身である)北海道なら、すごい先生がいらっしゃるよ」と教わり、ホームページを見たことがきっかけです。そのときに長期研修生を募集していることを知りました。

 吉川先生に初めてお会いしたのは、卒業後の夏、一日の短期研修生として研修をさせていただいたときです。鍼灸学生のときに吉川先生のDVDを見て、陰陽 太極鍼を試してみましたが、学生だった私は治療効果をうまく出すことができず、「吉川先生だからできるのではないか。」と思っておりました。一日研修で は、吉川先生が実際に治療しているところを見学させていただき、更に吉川先生はどんな質問にも気さくにお答えくださいます。「陰陽太極鍼はだれでもできるのよ。長期研修生もみるみるうちにできるようになるの。」とのお言葉に、長期研修生として学びたいという気持ちが益々強くなりました。

 長期研修生の待機登録をお願いしたものの、長い人では長期研修生に約3年待機したことを伺い自分の順番が来るのは遠い先だと諦めておりました。その後、幸いなことにお声がか かり、東洋鍼灸専門学校を卒業した年、2012年11月から1年4ヶ月間、長期研修生として東方鍼灸院で学ぶことができました。その経験は、とても貴重な ものとなっています。

 吉川先生の患者さんにツボの場所を尋ねながら取穴をし、陰陽のバランスを整える治療である陰陽太極鍼は、多くの症状に対応ができます。現在の医学では治 療が難しいとされる病名の患者さんでも、陰陽のバランスを整えることで楽になることを何度も目の当たりにしました。この方法は、外国人の治療をするとき に、患者さんの訴えを英語を全て理解することは難しいにもかかわらず、効果を出せることにつながっています。

 東方鍼灸院で実際に患者さんを治療するようになった初めの頃は、自分の鍼の効果が出て症状が楽になっているかを患者さんに尋ねるのが恐ろしくてたまりま せんでした。しかし、患者さんの症状がよくなるまで、王不留行、皮内鍼、耳鍼、刺絡、温灸、点灸、ローラー鍼、梅花鍼など、あらゆる技術や理論を使いこな し真摯に施術される吉川先生の姿勢を習い、患者さんに効果を尋ねながら治療をしていくうちに、ツボが一ミリずれるだけで効果が劇的に変わることを学びました。また、全世界から帯広に研修に来られる鍼灸師の先生との出会いもとても刺激になりました。吉川先生や代表、一緒に働く長期研修生の方にも大変お世話になりました。

 7ヶ月の契約の半分が過ぎ、11月に入ると感謝祭、クリスマスやお正月で船は忙しい季節です。カリブ海でも冬はやってきます。10月頃から海が荒れる日が多くなり、船酔いを訴える患者さんが増えてきました。乗組員も激しく揺れる船の中では船酔いを訴える人が多いです。お互い仕事中の時間のないときでも王不留行をサッと耳に貼って「船酔いの薬を飲んでもよくならなかったのに、種を押していたら楽になった」と喜ばれます。試行錯誤の毎日ですが、一人でも多くの人に日本で学んだ鍼のよさを知って貰えるように努力をし、また次の契約では別の航路にも挑戦したいと思っております。(2014年)

VOICE110(長期研修)/鍼灸師(東京都・女性)

 私が東方鍼灸院を知るきっかけとなったのは、松田博公氏の「鍼灸の挑戦」(岩波新書)という本です。北海道の鍼灸師で、目の治療を得意とされている先生ということで、吉川院長のことを知りました。私は生まれた場所が北海道(東京在住)で、大学のころは毎年訪れていたので、東方鍼灸院のことはなんとなく頭にずっと残っていました。

 その数年後、東京の鍼灸学校で学び始めることになるのですが、そこで講師をされていたのが松田博公氏でした。吉川院長と親交があるという松田先生から、吉川先生の刺さない鍼のはなしを聞き、いつかお会いしてみたいと思うようになりました。

 鍼灸学校2年目の頃ランニングにはまった時期があり、その年の6月初めてレースに参加することになりました。場所は生まれ故郷の小樽でした。どうせ北海道に行くなら、帯広にも行ってみよう思いたち、初めて東方鍼灸院の治療を受ける事になったのです。北海道に渡る3日ほど前、練習のしすぎから左膝の内側が痛むようになり、走ることが出来なくなりました。本番では走れないかもしれないと半ばあきらめながら、東方鍼灸院にやってきました。

 全身を触れて行きながら、選んだツボが左膝内側ではなく、反対の足のかかとの外側の申脈(しんみゃく)というツボだったのに驚きであったこと、また全身を撫でてもらうことの気持ち良さを感じました。治療が終わりベッドから起きて歩いてみると、膝の痛みが消えていました。さっきまで痛かったのが、まるで嘘のようです。

 当時は、そのうち痛みが戻ってくるのではないかと半信半疑でいましたが、その2日後の大会では完走でき、しかも自己ベストのタイムも更新したのでした。痛い場所に治療をするだけではなく、陰陽で経絡の流れを整えていく、というのが本当にあるんだということを自分の体で感じた体験でした。

 その後鍼灸学校を卒業してからは暫く訪問マッサージの仕事に携わっておりましたが、この度ご縁があり、前々から学びたいと思っていた東方鍼灸院で研修をさせて頂けるようになりました。しっかり技術をまなび、より多くの方にこの方法を知ってもらえるよう精進して行きたいと思っております。よろしくお願い致します。(2014年)

VOICE109(長期研修)/鍼灸師(熊本県・女性)

 私が鍼灸業界へ進むきっかけになったのは、目を患ったこと、そして吉川先生にお会いしたことに他なりません。約10年前、白内障と診断されて色々なことを試してきました。そんな中で「鍼」という選択肢が出てきた時、「初めて受ける鍼だからこそ間違いない鍼を受け たい。そうすれば、その後に どんな鍼を受けようとも自分に合わない鍼は分かるはずだ」と思い、眩しさで目が辛いにもかかわらず、必死に探しました。そこ でヒットしたのが吉川先生でした。後でお聞きすると、治療をお願いした日は、学会などでお忙しい合間の絶妙なタイミングだったとのこと。改めてご縁があっ たことに感謝するばかりです。

 先生の一鍼一鍼で身を持って変化を感じ、先生の技の素晴らしさに「凄いですね」と感動すると、先生は「そうなのよ、鍼は凄いのよ」と言われました。私は先生へ感動したのですが、先生は「鍼がなした技」のようにおっしゃいました。鍼灸界の大先生でいらっしゃるのに、こんなに気さくに低姿勢で話して下さって、 刺される鍼も優しくて。元々は私の目を治して頂きたくて訪れたはずが、すっかり先生に魅了されてしまいました。

 私は何の取柄もないのですが、一患者として接したのが鍼との出会いだったので、目の辛い方、見えない方の気持ちが少し分かります。この気持ちだけが私の誇れるところです。学校での勉強も決して得意ではなく、目が疲れやすい分、手や声、耳を使い、多くの時間を費やして覚えてきた不器用なタイプです。そのため 学生時代は、優先順位をつけて国家試験だけに絞って勉強してきました。これからが本当の勉強だと思っています。一人でも多くの患者さんの笑顔に出会うた め、努力し頑張ります。(2014年)

VOICE108(長期研修)/鍼灸師(神奈川県・女性)

 2013年2月、長期研修生としての出勤初日は本当に驚きの連続でした。帯広にやって来る前、数年前に吉川先生の下で研修をされ、現在は目白鍼灸院院長としてご活躍されている柳本先生に治療をして頂いたため、「陰陽太極鍼」の素晴らしさは体感していました。けれども実際に吉川先生の治療を目の当たりにし、つぎつぎと患者さんの症状が改善していく様子に、非常に大きな衝撃をうけました。

 陰陽太極鍼法では、患者さんの敏感な経穴に鍼を貼るだけで身体 が瞬時に変化するのですから、選穴や刺鍼手技に悩まずに済みます。また、四診法、特に首周、腹診、腓腹筋の把握痛などの触診はとてもシンプルで患者側にも 治療効果がよく分かる方法がとられ、難解な脈診に頼る必要もありません。しかし正直なところ「誰でもすぐに出来るようになるわよ。」という吉川先生の言葉 に半信半疑でもありました。

 思い起こせば当初の私は、鍼灸師の資格を取った後、2年弱鍼灸院で働いた経験はありましたが、訪問マッサージ業務の方が多く、鍼灸治療の技術はごく初歩的なものでした。それが毎日患者さんの治療をさせて頂けたことは、自分でも驚きでしたし非常に良い経験となりました。

 治療をさせて頂くようになった当初は、反応や症状がなかなか改善しないことも多く、やはり治療効果が高いのは吉川先生だからこそではないかと悩んだ時期 もあります。しかし、先生にツボの位置を修正して頂いたり、患者さんが教えてくださる場所をよく触り、その感覚を覚えていくことで少しずつ結果が出るよう になっていきました。教科書通りの位置にはない「活きた」ツボを探ること、鍼の位置をほんの少し修正し、それだけで状態がまったく変わるという経験を何度 もしました。

 東方鍼灸院には様々な疾患をお持ちの方が来院されます。それまでの治療経験では出会うことのなかった難治性疾患、鍼灸治療の適応外ではないかと思うような病名もありました。けれども陰陽のバランスを整えること、五臓の状態を正確にとらえそれらを整えることで、どのような症状にも対応できるという事を学ばせて頂きました。吉川先生の、あらゆる知識を駆使し王不留行や皮内鍼、ローラー鍼、刺絡など様々な手法で迷わず最適な治療をしていく様は本当に圧巻です。

 吉川先生はしばしば治療中に患者さんと共に驚き、喜び、「鍼ってすごいわね。」と眼を輝かせておられます。既に長年の治療実績があるにも関わらず、日々、新たな発見をされて刻々と治療法が進化している先生の飽くなき探究心は、本当に目を見張るものがあります。そしてそのお話を身近に伺えるのも大変勉強になりました。

 自分が治療をさせて頂く中で、患者さんの症状が変化し納得してお帰り頂けるよう確実に治療効果を出す、ということは多大なプレッシャーでもありました。 鍼を置く、という皮膚への微細な刺激だけで身体が変化し、その変化を患者側も自覚できる治療法だからこそ誤魔化しがきかない。けれども、自分の様に未熟で あっても吉川先生は治療を任せてくださり沢山の経験を積ませて頂けたからこそ、少しずつ自信が持てるようになりました。

 患者さんご自身の自然治癒力をほんの少しサポートさせて頂くこと、患者さんの辛い状態が改善して雰囲気も明るくなり笑顔でお帰りになる、という体験は鍼灸の力や可能性を実感でき、本当に素 晴らしい経験をさせて頂いたと感謝しております。この研修期間は自分にとって大変濃厚で貴重なものでした。

 ここで長期研修生として勤務できたことは自分にとって大きな財産となりました。慣れない土地にやってくることは不安もたくさんありましたが、代表や吉川先生のほか、東方鍼灸院出身の先輩方がいつも気にかけて下さいました。また全国から来られる短期研修生との出会いも大きな刺激になりました。そして、多くの患者さんからの温かいお心遣いに大いに元気を頂きました。本当に多くの方々に 支えていただいた1年数ケ月でした。皆様にはこの場をお借りして心よりお礼申し上げます。

 東方鍼灸院の患者さんは、安心してご自分の体の変化をしっかりと認識しながら治療を受けていらっしゃいます。地元では、「痛い、怖い」というイメージか ら鍼灸治療を受けたことのない友人・知人が沢山いますが、吉川先生の「刺さない鍼」の話をすると非常に興味を示してくれています。今まで鍼灸治療を経験し たことのない多くの方に鍼灸治療の素晴らしさを知って頂き、もっと身近なものとして頂けるよう、研修で学んだことを活かし、吉川先生の様に今後もより良い 治療を求めて努力し、学び続けていきたいと思っております。(2014年)

VOICE107(長期研修)/鍼灸師(熊本県・男性)

 私が長期研修生としてここ東方鍼灸院で働き始めて早1年半が経とうとしております。この期間は鍼灸師の私にとって、とても濃い貴重なものでした。思い起こせば当初の私は、鍼灸師の資格を取った後、2年弱整骨院で働いた経験はありました が、鍼灸治療の技術はほとんど持ち合わせておりませんでした。それが現在、毎日患者さんの治療をさせていただいているとは、我ながら驚きです。

 私は4年ほど前に1週間の短期研修で東方鍼灸院に来ているにも関わらず、最初のころはここでの治療方法や患者さんの身体の反応や変化していく様が不思議 で、あっけにとられたり、茫然としてしまうこともしばしばでした。何しろ、患者さんの敏感な経絡の一穴に鍼を貼るだけで身体が瞬時に変化するのですから、 普通の鍼灸師にとって最大の難関の1つである選穴や刺鍼手技に悩まなくてもすみます。また、四診法、特に首周、腹診、腓腹筋を用いた触診はシンプルかつ治 療効果がよく分かる方法がとられており、マスターするのに何十年もかかるとも言われる難解な脈診のみに頼る必要もありません。

 治療効果のほうは、例えば、足の王穴に鍼を1本貼るだけで五十肩の患者さんの腕が劇的に上がったり、背部の脾兪で腰痛が、胃兪で臀部の痛みがこれまた鍼 1本貼って良くなったりと枚挙に暇がありません。また、鍼灸治療で視力が上がるなどとは想像もつきませんでした。これらの治療効果を目の当たりにして、自分がそれまで労力かけてやっていた治療はなんだったのかと頭を抱えました。

 当初驚きの連続であった不思議な出来事も、今では日常的に起こることとして受け止められるようになりましたが、毎日の臨床においては新しい発見の連続で す。毫鍼を始め、ローラー鍼、王不留行、皮内鍼、刺絡等々、治療のバリエーションも多く、患者さんの体質と症状によって最適な治療方法と治療点の組合せを 模索するプロセスではいくらたくさんの本や資料を読んでも得ることのない貴重な経験を得ることができます。

 臨床上の経験と言えば、予想以上の結果が出て、鍼灸の力や可能性の凄さに感心させられることも多々あります。私の担当する患者さんだけを例にとっても、 視力回復では、76歳の女性の方が生涯最高の視力をマークしたり、2年前に眼底出血を起こして視力低下し、運転免許を更新できなかった66歳男性がめでたく免許更新できたり、等がありました。そして最近1番の出来事としては、脳血栓と高血圧で記憶が時々途切れる82歳の女性が、数回の治療で記憶が途切れなくなった上に、定期的に通われるうちに太れない体質だったのに健康的に5kgも体重が増え、気がつけば老眼鏡なしで新聞が読めるようになり、挙句の果てに は真っ白だった髪の毛が黒々としてきて本人も周りの人もびっくりという例がありました。

 既に数多くの治療実績があるにも関わらず、この1年半の間にも吉川院長の治療は日々進化を続けており、私も負けないように進化し続けてゆきたいと思っております。(2012年)